社交ダンスというと、お堅いイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、社交ダンスの企画をテレビで見ていると、踊ってみたいと思うことがあります。
踊ってみたいと思ったときに始めるのが一番で、社交ダンスを始めたら色々なことが変わったと言われる方も沢山いるのです。「健康的な体になった」という人や「人との繋がりが増えた」など、沢山の嬉しい悲鳴も聞こえてきます。
そんな社交ダンスの種類・歴史・特徴などを含め、基本ステップやQ&Aなど詳しく紹介していきます。
社交ダンスとは?
社交ダンスとは、Social Dance(ソシアルダンス)やBallroom Dance(ボールルームダンス)などと呼ばれる男女ペアで踊るダンスのことを言います。音楽の特徴によって様々なスタイルに分かれるが、世界共通のステップが存在します。
世界共通のステップを身に付けることで、言葉が通じなくても音楽があれば踊ることができ、国や人種の違いも関係なく、ダンスで語ることができるのも社交ダンスの魅力ではないでしょうか。
余談にはなりますが、社交ダンスという名前はSociality Dancing(ソーシャリティー・ダンシング)を誤訳したことが名前の由来だそうです。そのため日本では社交ダンスのことを、ソシアルダンスと呼ぶようになりました。英語ではボールルームダンスと言い、最近になって少し浸透してきたそうですが、まだまだソーシャルダンスが一般的ではないでしょうか。
社交ダンスの歴史
社交ダンスの始まりは12世紀のヨーロッパルネサンス時代に、民衆が踊っていたワルツが始まりとされています。そんなワルツが王侯貴族の中で踊られるようになり、そこから宮廷舞踊として親しまれるようになりました。
最初の頃の社交ダンスは、お互いの周りを踊る「ラウンドダンス」のスタイルでした。18世紀後半から現在のスタイルである、男女が向かい合ってペアで踊る「クロスホールド」のスタイルになったと言われています。
1922年にはイギリスロンドンで社交ダンスの世界大会が開催され、競技ダンスとして発展していきました。種目は「ワン・ステップ」、「フォックストロット」、「ワルツ」、「タンゴ」の4種類だったと言います。
新しい音楽と共に様々なスタイルが誕生し、今では10種類ものジャンル分けがされています。イギリスとアメリカでもダンススタイルが異なるようです。
社交ダンスのスタイル
- イギリスで発展した「イングリッシュスタイル」
- アメリカで発展した「アメリカンスタイル」
日本で一般的に「社交ダンス」と呼ばれているのは「イングリッシュスタイル」で、「アメリカンスタイル」は、アメリカやカナダで盛んに踊られています。
海外から日本に社交ダンスが伝わり、最初に踊られたのは「鹿鳴館」のダンスパーティーでした。外国との交流を図ろうという、明治政府の近代化・西洋化政策の一環で主に富裕層の間で親しまれていたそうです。
第二次世界大戦が始まると社交ダンスは踊られなくなり、終戦後に駐屯していたアメリカ軍人の遊ぶ場所として、ダンスホールが次々と建てられました。そこから裕福層以外に一般の人も社交ダンスを踊るようになり、現在に至るというわけです。
現在の社交ダンス
日本ではパーティーなどで踊られる社交ダンスの人気が衰退し、今では競技ダンスが一般的になりました。そもそもダンスパーティーが開かれることが稀で、若者などはディスコで踊ることが当たり前になってしまったようです。
社交ダンスは大人が踊っているイメージが強いですが、現在日本全国には若者向けの社交ダンスグループやサークルが多数存在します。学連(全日本学生競技ダンス連盟)に加盟している大学だけでも65校以上あり、若者の社交ダンスに対する熱意が伝わってきます。
現在の社交ダンスの楽しみ方
- 豪華客船のダンスクルーズ
- ダンスパーティー
- スクールでの習い事
- サークル活動
- 発表会
- ジュニア大会
- 全日本学生競技ダンス連盟(学連)
年齢問わず社交ダンスに触れている人たちは、色々な形でダンスを楽しんでいるようです。
社交ダンス6つのメリット
社交ダンスを始めて見たいけど一歩踏み出せないという人がいるようですが、社交ダンスを始めると様々なメリットがあります。生活面や健康面まで変わってくるでしょう。
6つのメリット
①健康に良い
②生涯楽しめる
③人との繋がりが増える
④非日常体験ができる
⑤自己肯定感が高まる
⑥自然と姿勢が良くなる
以上のような6つのメリットがあり、順番に紹介していきます。
①|健康に良い
社交ダンスをすることで有酸素運動効果が得られ、健康的な体作りができます。1曲踊るだけで相当な運動量が期待でき、代謝がアップすることにより健康面にも影響が現れてくるからです。
- 姿勢が良くなる
- 肩こりが治る
- 足腰や体幹が強くなる
- 歩き方が綺麗になる
- ダイエット効果がある
- ストレスを発散できる
- 自律神経を整えられる
- 心肺機能が鍛えられる
- 脳が活性化する
- 認知症予防になる
以上のような健康面でプラスになるので、社交ダンスを始めて見るのも良いでしょう。
②|生涯楽しめる
社交ダンスは、小さな子供から年配のお年寄りまで年齢関係なく踊ることができます。競技ダンスの大会でも年代別でエントリーができるので、子供から始めて年老いても踊り続けることができるのも社交ダンスの良いところです。
競技ダンスは、11歳以下から70歳以上まで年代別でエントリーができるので、社交ダンスを続けていれば生涯楽しめるということです。日々の楽しみや人生の生きがいになると、生活の質も上がり仕事に対しても積極的に行動できるでしょう。
さらに新しいジャンルに挑戦したり、技やステップ取得に力を入れたり楽しみ方は人それぞれです。
③|人との繋がりが増える
社交ダンスを踊ることで様々な人との繋がりが増えます。一緒に踊るパートナーであったり、ダンスを教えてくれるコーチもそうです。競技ダンスの大会に参加するようになると、対戦相手や大会を運営するスタッフなども仲良くなるチャンスがあります。
さらに日本人に限らず色々な国の人と出会うチャンスとなり、世界各国にまで繋がりを持つことができるのです。社交ダンスを通して出会った人たちは、これからダンスを続けていく上でとても良い財産となります。
共通の趣味の人と繋がりが増えることで、プライベートも充実し生活が充実させることができるでしょう。
④|非日常体験ができる
社交ダンスの衣装は美しいドレスや燕尾服など、普段着る機会が全く無い衣装を身に付けることができます。パーティー会場や大きなホールなどに行くだけでワクワクし、非日常体験を味わうことができるでしょう。
その際に見た目の清潔感が重要になってくるので、美意識が高まり自然と気をつけるようになります。また練習着もオシャレなものが増えてきているので、揃えるだけでも楽しくなってきます。
⑤|自己肯定感が高まる
社交ダンスを始める前は自分のことが嫌で、悪い部分しか見えなく否定的な性格の人がいたそうです。しかし社交ダンスを始めてからは、何をするにも前向きな考えになり自己肯定感が高まったそうです。
社交ダンスをもっと上手くなりたいや競技大会で優勝を目指すなど、様々な目標設定をすることで目標に向かって前向きに進むことができるでしょう。そのため人に対しても、否定するのではなく良い部分を見ることができるようになります。
自己肯定感が高まることで積極的になり、日々の生活がとても楽しいものに変わります。
⑥自然と姿勢が良くなる
社交ダンスは踊るときのシルエットが大事で、ダンスを始めたばかりの人が最初に壁にぶつかるポイントでもあります。いくらステップが上手くできていても、立ち姿勢が悪いと全てダメになるくらいです。
普段の生活からも姿勢に気を付けなければいけないので、自然と猫背の人も意識を持って取り組むようになります。そのため社交ダンスを始めてから数ヶ月から1年もすると姿勢が良くなります。
ひどい肩こりだったという人も、社交ダンスを始めて「肩の張りがなくなった」という人が多いようです。
社交ダンス3つのデメリット
メリットがあればデメリットも少なからず存在し、社交ダンスをする上でストレスになる場合もあります。しかしデメリットと思わず前向きに捉えることで、より社交ダンスが好きになり楽しめるということです。
3つのデメリット
①出費が多い
②ダンスをリードする男性は大変
③恋人や結婚している人は疑われる可能性も
以上3つのデメリットがありますが、順番に紹介していきます。
①|出費が多い
社交ダンスはとにかくお金がかかるジャンルでもあります。社交ダンスを習うだけであれば、月のレッスン料と練習用の衣装を最初に揃えるだけで済むからです。
レッスンを受けていると大会に参加してみたくなったり、色々なことに興味が出てきます。そうすると、競技用の衣装や参加費用など出費が多くなってくるでしょう。
大会で上位を目指したいのであれば、専属のコーチを雇う必要も出てきます。社交ダンスを趣味で続けるか、費用面をクリアーできれば問題ありません。
主な費用の目安
出費項目 | 目安費用・金額 |
---|---|
社交ダンスシューズ(男女共通) | ¥10,000~2,5000 |
男性衣装(フルセット既製品・オーダー品込み) | ¥40,000~350,000 |
女性ドレス(既製品) | ¥50,000~150,000 |
女性ドレス(オーダー品) | ¥300,000~上限なし |
スクール入学金(初回のみ) | ¥無料~10,000 |
1回のレッスン費用(グループレッスン60分) | ¥1,000~3,000 |
1回のレッスン費用(個人レッスン30分) | ¥3,000~10,000 |
デモンストレーション(発表会参加費用総額) | ¥200,000~350,000 |
競技大会登録料(大会出場ごとにかかる) | ¥1,000~10,000 |
競技大会参加料(1競技毎)(競技大会によっても異なる) | 1,000~6,000 |
②|ダンスをリードする男性は大変
社交ダンスは、女性をリードして踊らなければいけません。振り付けの構成やステップはもちろん、周囲の人の動きをみて踊る必要もあります。
男性は女性をエスコートするために、常に気を張って全ての動きをコントロールしなければいけないのです。色々な技術を求められるので、男性は女性の3倍練習する必要があると言われています。
練習が好きで、それよりもパートナーと踊ることが楽しいと思っている人は、苦に思うことはないでしょう。それよりも上手くなっていくことが、やりがいに繋がると思います。
③|恋人や結婚している人は疑われる可能性も
社交ダンスは、異性のパートナーと踊る必要があります。パートナーが恋人や結婚相手であれば問題ないのですが、別であった場合は浮気を疑われることもあるようです。
協議大会を目指しているのであれば、パートナーとの信頼関係が社交ダンスには重要になるからです。そのため普段から一緒に過ごす時間が増えるのも当然で、恋人のように仲良く接することも少なからずあるからです。
恋人や結婚相手にとっては良い気持ちはしないので、社交ダンスをまずは理解してもらうことが大事になってきます。お互い家族ぐるみのオープンな関係を目指すのが、誤解を解く近道ではないでしょうか。
社交ダンスの代表的なステップ
社交ダンスには基礎のステップが定められており、それらを身に付けることでさらに美しく踊ることができます。日本で踊られている「イングリッシュスタイル」は、大きく分けると「スタンダード」と「ラテンアメリカン」の2種類に分類されます。
それぞれ5種類のステップが存在し、合計10個もの基本ステップがあります。どのようなものがあるのか順番に見ていきましょう。
スタンダードダンス
ヨーロッパで確立された、エレガントさと優雅さが洗練された踊りで、曲調で目立つのは、弦楽器系のメロディーです。男女の距離を近く保ちながら、腕をホールドしたまま踊るため、昔は「モダン」とも呼ばれていました。
スタンダードダンスの種目では、男性は燕尾服、女性はロングドレスを着るのが基本的で、「いわゆる社交ダンス」といったイメージではないでしょうか。
スタンダード代表的なステップの種類
- ①ワルツ
- ②タンゴ
- ③スローフォックストロット
- ④クイックステップ
- ⑤ヴェニーズワルツ/ウィンナワルツ
以上のステップを順番に見ていきましょう。
①|ワルツ(Waltz)
ゆっくりとした3拍子の音楽に乗せて踊るステップで、滑らかに上下運動をする「ライズ&フォール」と、大きく揺れる「スイング」が特徴的です。動きがゆったりとしているので、初心者が最初に習うことが多いステップで、スタンダードダンスの中では一番人気の花形種目と言えるでしょう。
ワルツ基本ステップ
・ナチュラルターン
・ウィスク
・シャッセ
・ベーシックウィーブ
社交ダンスワルツ世界1位のダンスの技は圧巻です。
②|タンゴ(Tango)
静と動がハッキリしていて、スピードの緩急が情熱的に見えるステップです。「ストップ&ゴー」と、首を振る「ネックアクション」が多用された動きが印象的で、スタッカートが効いた音楽に合わせて踊ると、とても激しく見えます。
タンゴの発祥はアルゼンチンですが、ヨーロッパで発展したと言われており、日本人が最も得意とするダンスではないでしょうか。
タンゴ基本ステップ
・タンゴウォーク
・プログレッシブリンク
・クローズドプロムナード
・バックコルテ
全日本学生競技大会でタンゴ日本一になったペアのダンスです。
③|スローフォックストロット(Slowfoxtrot)
ゆったりとした4拍子の曲に乗せて流れるように踊るステップで、滑らかに移動したり激しいアクションを入れる場合もあります。膝や足首を柔軟に使った正確な足捌きを要求されるため、難しいと感じる人も多いです。
スローフォックストロット基本ステップ
・フェザーステップ
・スリーステップ
・バックフェザー
・リバースターン
・リバースウェーブ
試合前のデモンストレーションですが、トップレベルのダンスは見応えがあります。
④|クイックステップ(QuickStep)
飛んだり・跳ねたり・走ったりと、スタンダードの中では最も元気なステップです。移動量も多くスピードも速いため、まるでジェットコースターのように流れていきます。
ゆっくりとしたステップと速いステップの使い分けや、速さの中に優雅さを要求されるため、カップルの絶妙なコンビネーションが必要です。
クイックステップ基本ステップ
・クウォーターターン
・フォワードロック
・プログレッシブシャッセ
・ナチュラルスピンターン
プロフェッショナルショータイムというクイックステップのデモンストレーションです。
⑤|ヴェニーズワルツ/ウィンナワルツ(Viennese Waltz)
非常にリズムの速いワルツで、宮廷舞踏から発展したステップです。速い回転が特徴なので、ダンスパーティーで踊る際は、すれ違ったり場所を確保するのが大変となります。現在はステップが進化しているため、好んで踊るカップルも増えてきているようです。
ヴェニーズワルツ/ウィンナワルツ基本ステップ
・ナチュラルターン
・リバースターン
・バックワードチェンジ
・フォワードチェンジ
ワールドオープンスタンダードの決勝戦の模様です。
ラテンアメリカン代表的なステップ
キューバやブラジルなどの地域で生まれた情熱的な踊りが特徴的です。曲調は打楽器系のメロディーが目立ち、リズム感溢れ自然と踊りたくなる音楽です。
男女の距離が離れたり近付いたりと自由に動くことが多く、上級者になるとアクロバティックな「ドロップ」という大技を振り付けに組み込んだりもします。男性も女性も、スタンダードダンスに比べると露出が激しめな衣装を着ることが多くなります。
ラテンアメリカン代表的なステップの種類
①チャチャチャ
②サンバ
③ルンバ
④パソドブレ
⑤ジャイブ
以上のようなステップを順番に見ていきましょう。
①|チャチャチャ(Chachacha)
軽快でキレが良く、スピード感のあるステップが見所で、「ストップ&ゴー」のステップが多用されているため素早く動くことが求められます。男女の駆け引きを表現したオシャレなクラブダンスで、キューバが発祥で情熱溢れるダンスです。
チャチャチャデモンストレーション用の動画です。
②|サンバ(Samba)
弾むような「バウンスアクション」という動きが特徴で、ブラジルのサンバと同様に、フロアを反時計回りに移動しながら踊ります。その姿は「ラインオブダンス(LOD)」と呼ばれています。
サンバ基本ステップ
・サンバウォーク
・サンバホイスク
・サンバウィスク
・トラベリングボルタ
サンバのプロが本気で踊ったらダンスレベルが違い過ぎます。
③|ルンバ(Rumba)
4拍子で比較的ゆったりとしたリズムで踊る、表現力が求められるステップです。男女の恋の葛藤や駆け引きなど、心の機微を表現しているため「愛の踊り」と呼ばれることもあるそうです。
4拍子の2泊目から踊り出すステップが覚えやすいため、初心者が一番最初に覚えることが多いステップでもあります。
ルンバ基本ステップ
・スポットターン
・オープンベーシックムーブメント
・オープンヒップツイスト
・ニューヨーク
●世界レベルのルンバを体感ください。
④|パソドブレ(Paso doble)
スペインの闘牛とフラメンコをイメージしたステップで、力強く激しくドラマチックな踊りが特徴的です。男性が闘牛士で、女性が牛かもしくはケープを表現します。
主役を女性に据える「ラテンアメリカン」の中で、唯一男性が主役になるダンスです。
パソドブレ基本ステップ
・シャッセトゥーライト
・プロムナード
・スパニッシュライン
・グランドサークル
●2021年日本インターナショナル選手権決勝の映像です。
⑤|ジャイブ(Jive)
アップテンポな音楽に合わせて刻む素早いステップで、足をキックする動きが多くダンスの楽しい要素が詰まっています。運動量が多いため、パーティーなどで踊られることはあまりありません。
競技会でも上級者以上が踊る場合がほとんどですが、ロック系の音楽を用いるため社交ダンス初心者が楽しんで練習するには打って付けのステップです。
ジャイブ基本ステップ
・フォーラウェイロック
・チェンジオブプレイス
・ストップアンドゴー
・アメリカンスピン
●ワールド・オブ・ダンスのアマチュアリーグの大会の様子です。